環境ジャーナリスト・翻訳家、幸せ経済社会研究所所長、東京都市大学環境学部教授。東京大学大学院教育心理学専攻修士課程修了。環境問題に関する翻訳、執筆、講演、企業のCSRコンサルティングや異業種勉強会等の活動を通じて、地球環境の現状や国内外の動き、新しい経済や社会のあり方、幸福度、レジリエンス(しなやかな強さ)を高めるための考え方や事例等を研究。「伝えること」で変化を創り、「つながり」と「対話」でしなやかに強く、幸せな未来の共創をめざす。
ずいぶん昔の話になりますが、私はかつて、英語と日本語の橋渡しをする同時通訳者として仕事をしていました。あるとき、環境関連の会議の準備で、当時の環境庁の担当者と科学者たちと、私たち通訳者が集まって、今度の会議のテーマである「global warming」という新しい概念と用語をどう日本語に訳そうか、と相談しました。当時、「地球温暖化」という言葉はまだ存在していなかったのです!
そのときに提案された日本語訳は、実は「温暖化」ではなかったのですが、その後、「地球温暖化」という用語と概念は社会に広がり、今ではだれでも知っていますし、口にするようになっています。地球の気温が上がってきていること、気候が変わりつつあることは、科学者に聞かなくても、日々の暮らしで実感することも多くなっていますよね。
ちなみに、用語の話の余談ですが、少し前から、世界でも日本でも「global warming(地球温暖化)」という用語はもはや適切ではない、用語を変えるべきだ、という声が上がっています。提案されている新たな用語は、「global heating(地球高温化)」! たしかに、「温暖化」だと、「暖かくなっていいかも~」と、深刻度を感じにくいかもしれないですね。このままいくと、「温暖」を通り越して「高温・高熱」の領域に入っていってしまう!という切迫感を持つべきだ、という提案です。
「すでに気温は上昇し始めているみたい」と感じていても、「今のところ、それで壊滅的な状況になっているわけではない」「まだ心配しなくても大丈夫」などと思っている人も少なからずいるはずです。では、「実際に、気温はどのくらい上がってきているのか」、そして「どこまで気温が上がると、本当にマズイ状況になってしまうのか」を見ていきましょう。