環境ジャーナリスト・翻訳家、幸せ経済社会研究所所長、東京都市大学環境学部教授。東京大学大学院教育心理学専攻修士課程修了。環境問題に関する翻訳、執筆、講演、企業のCSRコンサルティングや異業種勉強会等の活動を通じて、地球環境の現状や国内外の動き、新しい経済や社会のあり方、幸福度、レジリエンス(しなやかな強さ)を高めるための考え方や事例等を研究。「伝えること」で変化を創り、「つながり」と「対話」でしなやかに強く、幸せな未来の共創をめざす。
現在、元アメリカ副大統領アル・ゴア氏の長編ドキュメンタリー映画「不都合な真実2 放置された地球」が、全国で公開されています(2017年12月時点/上映に関する情報は、映画オフィシャルサイトをご覧下さい)。
この映画は、第30回東京国際映画祭のクロージング作品として上映されたことでも注目を集め、書籍『不都合な真実2』としても書店に並んでいます。私は翻訳家として、この作品に携わり、衝撃的な映像や写真の数々を目の当たりにし、あらためて、温暖化対策あるいは省エネに向けた“行動”の重要性を、皆さんにお伝えしていきたいと思いました。
大学生の頃からライフワークとして数十年にわたって地球温暖化問題に取り組んできたゴア氏は、2007年に「不都合な真実」を中心とした幅広い活動に対して、IPCC(気候変動に関する政府間パネル)とともに、ノーベル平和賞を受賞しています。
それから10年。多くの国や企業が温暖化対策に取り組むようになってきましたが、まだ世界全体の温室効果ガス排出の増加に歯止めはかかっていません。そして、「異常気象のオンパレード」という言葉が浮かぶほど、これまでになかったような大雨や長雨、強烈な台風や高温のニュースが、あちこちから届きます。日本でも近年、「気象観測史上でも最大級の集中豪雨」や、「50年に1度の記録的大雨」が生じ、河川の氾濫や土砂崩れによって多くの人命が失われるなどしています。東京でも、8月に連続21日間にわたって雨が降り続き、局地的大雨も観測されました。
「異常気象」とは、30年に一度程度起こる事象を指すのですが、このところ「毎年、異常気象」と言っても過言ではない状況が続いています。これらの事象について「この豪雨は100%温暖化のせいだ」と断言することは科学的には難しいのですが(科学では最大の確率でも100%とは言わないからです)、何年も前から科学者が「温暖化が進行すると、こういった極端気象の現象が増える」と予測していた現象が展開しつつあるのは間違いありません。
こうした状況下、ゴア氏は『不都合な真実2』通じて、「3つのメッセージ」を訴えかけていると考えています。 1つめは、「温暖化の影響は顕在化しており、状況は悪化の一途をたどっている」ということ。
2つめは、「温暖化の解決策はすでにわかっており、私たちの手中にある。前作からの10年、企業や国の取り組みも大きく進み、かつての『温暖化対策か、経済成長か』ではなく、『温暖化対策が経済成長の原動力』という状況になってきた!」ということ。
そして最後は、「間に合うタイミングで社会全体を動かしていくためには、私たち一人ひとりが省エネ意識を省エネ行動に移すとともに、他者との共感の輪を広げていかなくてはならない!」ということです。