環境ジャーナリスト・翻訳家、幸せ経済社会研究所所長、東京都市大学環境学部教授。東京大学大学院教育心理学専攻修士課程修了。環境問題に関する翻訳、執筆、講演、企業のCSRコンサルティングや異業種勉強会等の活動を通じて、地球環境の現状や国内外の動き、新しい経済や社会のあり方、幸福度、レジリエンス(しなやかな強さ)を高めるための考え方や事例等を研究。「伝えること」で変化を創り、「つながり」と「対話」でしなやかに強く、幸せな未来の共創をめざす。
温暖化の進行をとどめるべく、各国では2050年には温室効果ガスを80%削減するなどの目標を掲げています。日本の目標も2050年には80%削減です。日本の温室効果ガスの9割以上は二酸化炭素(CO2)で、その大部分はエネルギーの消費から出ています。つまり、温暖化対策とは、省エネ+再エネシフトなのです。
私たちの暮らしにとって、必要なエネルギーを削減しようという「省エネ」は、①省エネ地域をつくる取り組み、②省エネ住宅をつくる取り組み、③家の中での省エネの取り組み に大きく分けることができます。それぞれ見ていきましょう。
エネルギー消費量を抑える地域づくりに取り組んでいるところもあります。たとえば、「地域熱供給」は、各家庭で給湯や暖房をするのではなく、地域に熱供給施設を設置して、そこから地下のパイプで各家庭や建物に熱を供給し、給湯や暖房に使ってもらう仕組みです。熱供給施設で、輸入の石油や石炭、天然ガスではなく、森林からの木材など地域にある燃料を使うことで、その地域の暖房や給湯によるCO2排出量を大きく減らすことができます。木材を燃やすとCO2が出ますが、そのCO2はその木が生長する過程で吸収したものなので、実質的にCO2ゼロと考えられるためです。同時に、地域外に流出するエネルギー代金も減って、地域経済の活性化にも役立ちます。
北海道の下川町では、暖房用の灯油などの石油・石炭製品の代金として、毎年約7.5億円が町外に流出していました。林業の盛んな町なので、森林や林業から出る間伐材や端材をバイオマスボイラーで燃やして熱をつくればいい!と、地元でつくった熱を地元の住宅や建物に供給する取り組みを始めました。
現在、町全体で使っている熱のうち、約半分は”町産“の熱です。これによって、町全体のCO2が18%減ると共に、毎年2~3億円の暖房用燃料代が、町外に流出せずに地域に残るようになりました。素敵ですね!