なぜ「2℃」なのでしょうか?

そもそも、気温上昇をどこで抑えるかという目標をどのように定めるのでしょうか?
1つには「科学的な知見」が重要な情報となります。温暖化に関わる世界の科学者の集まりであるIPCC(気候変動に関する政府間パネル)では、5~6年ごとに「温暖化の現状や影響」などに関する報告書を出しています。そこには、何℃の気温上昇でどんな影響が生じるかが書いてあります。もちろん科学ですべてがわかっているわけではないので、「不確かさ」の大きいものも多くあります。
もっとも、IPCCなど科学者の役割は「このくらいの上昇で、こういった影響が出ると考えられる」という科学的知見を伝えることであって、「だから、2℃を目標にしましょう」ということを決めたり、提案したりすることではありません。とすると、科学的な知見をもとに目標はどのように設定されるのでしょうか?
いうまでもなく、気温上昇が大きければ大きいほど、影響は大きく深刻になります。温暖化による海面上昇などの危機に瀕している島しょ国などは、「2℃でも甚大な被害が出てしまう。1.5℃をめざすべき」と主張しています。


一方で、目標が高ければ高いほど、温室効果ガスを大きく早急に減らす必要が出てきます。主な温室効果ガスは二酸化炭素ですから、つまり、化石燃料からの転換を早急に大規模に進めなくてはならない、ということです。エネルギーを転換するためには、発電設備などを製造・設置したり、送電網を整備したり、それに伴う、さまざまな法律やインセンティブなどを整えたりする必要があります。
最大のスピードで進めたとしても、温室効果ガスを削減していくためには、ある程度の時間はかかるうえ、かなりのコストがかかってきます。温暖化対策よりも優先事項が多く、他にコストをかける必要があると考える人々は、削減目標に至るプロセスについて優先事項をゆるめにし、「すぐに」ではなく「時間を掛けて」減らしていこうと考えます。
「未来に起こりうる危険を、どのようなスピードで変化させ、どの程度のコストをかけ、どこまで避けるべきか」は、科学的に決まるわけではなく、このようにさまざまな立場の人々や組織の考えのせめぎあいの中で決まってくるものなのです。その結果として、現在の国際合意は「2℃以内」をめざす、となっています。


今後、たとえば、温暖化の被害が想定以上に深刻化したり、新しい科学的知見によってある温度を超えると予想を超える被害が出ることがわかったりした場合には、社会の人々の考えも変化し、国際合意の目標温度もさらに厳しいものに設定し直す、ということもありうるでしょう。

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