2025 5/16
第3期植樹活動 「カンボジア/プノン・クーレン国立公園森林再生プロジェクト」 始動に向けた特別インタビュー ~目的は世界規模の環境貢献~

高効率ガス給湯・暖房機「エコジョーズ」や家庭用燃料電池コージェネレーションシステム「エネファーム」の普及に併せて植樹活動の支援を行う、一般財団法人ベターリビングの「ブルー&グリーンプロジェクト」。2006年のベトナムでの活動に始まり、2014年からは岩手県陸前高田市の高田松原再生活動を行いました。
このプロジェクトの第3期植樹として、カンボジアで展開される「プノン・クーレン国立公園森林再生プロジェクト」が間もなくスタートします。約30haの土地で6年かけて実施される今回の取り組みについて、2025年2月15日にカンボジアで開催された調印式にそろって参列した、一般財団法人ベターリビングの石神 諒氏と、国際緑化推進センターの藤村 武氏にお伺いしました。
第3期は、第1期と第2期の経験をいかしたプロジェクトに
――始めに、今回で3期目となる「ブルー&グリーンプロジェクト」の、これまでの歩みを教えてください。
石神氏:「ブルー&グリーンプロジェクト」は、「エコジョーズ」や「エネファーム」など、環境性能が高い住宅部品の認知・普及とともに植林を実施していく社会貢献活動です。2006年から2016年まで行った第1期のベトナムでは、1台の「エコジョーズ」が普及すれば1本の苗を植えるという仕組みのもと、住宅業界を巻き込む形で約390万本の植樹支援を行いました。
2014年から2022年に実施された第2期の高田松原再生活動は、津波被害を受けた岩手県陸前高田市での復興支援となりました。この第2期は、活動を広く知っていただくため、一般市民の方々にも伝わりやすいキャラクターづくりやボランティア募集などの告知活動を実施した結果、地元との一体感を得てプロジェクトを進めることができました。


第3期は再び海外ですが、第1期と第2期の経験をいかした、より良い環境を生み出すプロジェクトであることを知らしめていきたいです。
――第3期でカンボジアが選ばれた理由とは?
石神氏:第2期の最中、国際緑化推進センターに相談して、ベトナムに続く東南アジア方面の候補地を検討していただきました。第2期のスタートから約10年空いたのは、間にコロナ禍を挟んだからです。
藤村氏:主に海外での森林保全活動を行っている我々のセンターは、過去の「ブルー&グリーンプロジェクト」にも協力した経緯があります。3期目のご相談をいただき、ASEAN圏内で森林減少率が高いミャンマーとカンボジアにプロジェクトの打診をしました。両国とも前向きなお返事をいただいたのですが、話を進めている途中でミャンマーの政変が起き、カンボジアが第一候補となりました。
――植樹が行われるプノン・クーレン国立公園はどんなところですか?
石神氏:公園は、カンボジア西北部のシェムリアップ州で約373㎢を有し、世界遺産のアンコール遺跡からすぐ近くのところにあります。クメール王朝の発祥の地であり、カンボジアの人々にとっては聖なる山という象徴的な場所にもなっています。周辺住民の生活における貴重な水源にもなっているので、今回の森林保全は意義あるものになるでしょう。


――お二人が参列された、2月の現地調印式の印象や感想をお聞かせください。

石神氏:まず驚いたのは、カンボジア環境省の自然保護地域総局のトップであるスンレアン総局長が調印に臨まれたことです。このプロジェクトに対する期待の大きさが実感できました。調印式後の昼食会でスンレアン総局長は、「今回のプロジェクトは植樹に留まらず、生物多様性を含めたカンボジア全体の自然環境の改善にもつなげたい」とおっしゃいました。その熱い語り口は強く印象に残っています。

藤村氏:前職の林野庁時代にも様々な式典を経験しましたが、その中でも今回は特に、先方の意欲の高さを感じ取ることができた調印式だったと思います。

苗木が大木になる未来を夢見て
――第3期の「ブルー&グリーンプロジェクト」実行に向け、調印式が行われる前の2023年から、植樹試験に当たるパイロットプランがプノン・クーレン国立公園内で実施されたと聞きました。どんな様子でしたか?
藤村氏:パイロットプランは、カンボジアでの活動経験がなかった我々センター側からオファーさせていただきました。現地に入った第一印象は、「もったいない」でした。というのは、新たに植林を行う予定地は、カンボジア政府主体で2019年に一度植林をした場所ながら、藪のような状態になっていたからです。せっかく植えたのに適切な保育がされなかったため、植える前の状態に戻っていました。
――だから、もったいないと?
藤村氏:様々な事情があったと思いますが、継続的に管理すれば必ず木が育つ。そう思ったからこそ、この場所で植林を成功させれば、活動の重要性をより理解してもらえると思いました。
石神氏:植林には樹種の選定が大事です。パイロットプランでは、約6haの区域に11種6,740本の苗木を植え、結果的に約72%の生存率を達成しました。
藤村氏:その成果が得られたのは、下草刈り等の手入れをしてくれた、公園レンジャーを始めとする現地の人々のおかげです。


――知識と経験に基づいてパイロットプランが実施されたと思いますが、苗木が育たない可能性は危惧されませんでしたか?
藤村氏:心配したのは、苗木を植えた後に訪れる乾季でした。もちろん予期して準備を整えましたが、やはり天気は神頼みのようなところがあります。ですがうれしいことに、「今日は雨が降った!」と現地の担当者がメッセージで映像を送ってくれたんですね。彼らの植樹への関心の高さは、我々にとっても心の支えになりました。
――海外での植林活動で、もっとも難しいのはどんなところですか?
藤村氏:海外での植林活動は、現地の住民による小規模なものか、民間会社が土地の利用権を得て大規模に事業化するというパターンが多いです。なぜなら、木を植えるには土地が必要で、その土地を利用するには権利が必要だからです。一般的な国立公園には居住者がいないものですが、プノン・クーレンは国立公園として指定する前から住んでいる人達がいました。そのため国のプロジェクトとして植林するためでも、彼らと土地の利用について調整する必要があります。今回のプロジェクトで不可欠なのは、プロジェクトで植えた木を地域の人達が自分たちの財産として大事にするような施策です。
石神氏:地元の人々の熱意の下でプロジェクトを進めるのは、第2期の高田松原でも同様でした。第2期を成功に導いてくれたのは、告知や啓蒙の活動でした。ですからカンボジアでも、経験を活かす形で進めたいと考えています。これはあくまで計画ですが、公園内には小学校もあるので、未来を担う子供たちに環境教育ができたらと思っています。

――今回のプロジェクトに期待するものとは何でしょうか?
石神氏:今回植える苗木の中には、成木するまでに100年はかかる樹種もあるので、私が生きている間には、大木となる姿を見届けることはできないでしょう。ですが「ブルー&グリーンプロジェクト」は、世界規模の環境貢献が目的なので、取り組みを続けることが大事です。私にできるのは、環境性能が高い高効率ガス給湯・暖房機等の普及に努めていくこと。同時に、カンボジア環境省と密なコミュニケーションを取り、継続的なCO₂吸収量を調査し、プロジェクトの進捗状況を日本国内でも発信することです。
藤村氏:私の目標は、一般財団法人ベターリビングからの支援をいただきながら、森林を育てていく技術をカンボジアに根付かせることです。いろいろな専門家や技術者の助言をいただきながら、カンボジアの技術者と一緒に植林を進めていきたいと思っています。
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「プノン・クーレン国立公園森林再生プロジェクト」は、2025年から2030年までの植樹作業に加え、2032年まで保育・支援を行なう長期計画です。しかし植樹活動は、苗木を植えて終わるものではありません。プロジェクト従事者と地元住民が一体となり、地球環境改善の実効策となるよう、守り育てていくことが重要です。
今年度のカンボジア現地での取り組みとして、国際緑化推進センターの藤村 武氏は、2025年6月にプノン・クーレン国立公園に入り植樹を開始。ベターリビングの石神 諒氏は、同年11月頃に現地に赴き、樹種の成長度合いの確認や、公園レンジャーから植樹状況のヒアリング等、それぞれの立場で「ブルー&グリーンプロジェクト」を遂行していきます。
「プノン・クーレン国立公園(カンボジア)森林再生プロジェクト」 調印式の詳細はこちら
【クレジット】
Text:田村十七男